後生掛温泉

農事が大方終わりましたので、骨休めに後生掛(ごしょうがけ)温泉に行ってきました。時おり北風が吹き荒れ、枯れ草がなびき、色あせた木々の葉が流れ落ち、初冬の気配漂う山道に車を走らせます。幾分紅葉の残っている山里を過ぎて、八幡平の頂上に通じる山道に入ると、林の中に湯気が上っています。もう温泉はじきです。

春から夏の、盛りの季節を過ぎ、秋から冬の、翳りの季節を目の前にして、今年の農事のあれやこれやを思いつつ、温泉に浸かります。低温で雨の多い年でした。春先に泥負い虫が大発生しました。、ヌカカやブヨによく刺され、冷夏で嵩(かさ)は張っていましたが実は少なく、ぬかるみに足を取られ作業がはかどらず、などと今年の米作りの苦労を思い起こします。でも男時(おどき)女時(めどき)が順次繰り返されるのは、「力なき因果」だと世阿弥が言うように、きっといい年もあるでしょう、と根拠なき確信?が湧いてくるのも、温泉の効能のひとつです。蒸し風呂、気泡風呂、泥風呂、露天風呂と浸かり、地球の体温を感じながら疲れをほぐします。体に沁みついた温泉のにおいは消えることなく、効能が長続きしそうです。

八甲田に地獄沼がありましたが、ここにも地獄がありました。泥湯温度94度の紺屋地獄です。染料を煮ているかのように硫化鉄の沈殿物が蒸気となって湧きあがります。じっと見ていると、湧いているのに吸い込まれそうになる力に満ちているから不思議です。地獄があの世の地下にあるのではなく、この世の水平方向の地続きにある、それがなんともいいのです。ただし、善人も悪人もここで地獄を見ることができますが、中には入れません。熱すぎます。

後生掛けの名にあやかり、そう遠くはない私のあの世(後生)が、極楽であることを願い、ついでにこれからの今生も極楽であることを願いつつ、温泉をあとにしました。

氷が張る朝もあり、すでに暖房の欠かせない冬が動き出しました。

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