北上川源流1

旧暦六月の満月だからでしょうか、赤トンボの羽化が一斉に始まりました。たぶんアキアカネだと思います。毎年、おそらく100匹以上の数の赤トンボが田んぼから湧いて出てきます。湧く、という表現がぴったりするほど、青年にまで育った稲のあちこちに、抜け殻に捕まった赤とんぼがじっと息をひそめています。近づけば、ひらひらとまるで蝶のように心もとなく飛んで、また近くの稲に捕まります。可愛いものです。この赤トンボのふる里が私の田んぼだと思うと、すこし胸を張りたくなります。全くの自己満足と言えますが。

思えば赤トンボのために苗消毒もせずに除草剤もカメムシ防除剤も撒かずに、お米を作っているようなものです。よく趣味だからできるんだよ、と言われます。その通りです。たかだか1反半ほどの田んぼだからできるのです。何事も魁より始めよ、で無農薬で米野菜を作り続けて4年目になりました。でもそのことによって、苦労も多いのです。田んぼではまずイネドロオイムシの大量発生です。苗を植えて2週間目ごろから、這い上がってきたドロオイムシが苗を齧ります。苗は黄色く白く変色し、絣模様になって、見るからに貧相です。ちゃんと育つのか心配になります。胡桃や空木の葉で虫を払います、何度も。そして、待ちます。ことを尽くして待ちます。そのうちに苗は元気になって、茎が分けつして青い葉が伸びてきます。そうなれば他の田んぼと遜色がないくらいになります。いつの間にかドロオイムシの姿も見えなくなります。成虫になったのでしょう。この後も穂が出るころにカメムシが、実りのころにイネコウジカビがつき苦労は続きますが、数はそう多くはなく、手でひとつひとつ取り除けば事なきを得ます。

さて、この里の空が赤トンボの群れで真っ赤に染まる風景を夢見て、日々、除草機を転がし、手で草を取り、その合間にドロオイムシを払う、そんな修業がひと月半続いた7月の半ばをもって今年の田草取りの目途がつきましたので、骨休めに啄木や賢治も親しんだ北上川、その源流を訪ねることにしました。(つづく)

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