冬枯れの記

「浅草の夜のにぎはひにまぎれ入りまぎれ出で来しさびしき心」啄木です。

「だけど、神谷バーってのはいまでもあるのかな」「ええ、あると思いますわ。いつか栃木へ帰るとき、ちらっとみたような気がするんですの。映画見て、神谷バーへいって、あたしはブドー酒、あなたは電気ブランで、きょうのあたしの手柄のために乾杯して下さいな」三浦哲郎の「忍ぶ川」です。

「この世界の片隅に」「海よりもまだ深く」の映画、「ゴッホゴーギャン」の美術展、鈴本の落語、寅さんの帝釈天、ジュンク堂三省堂。

上野、浅草、池袋、柴又とすごい人並みです。人が作った文化にたっぷり浸ることができる東京。鉄道やお店やデパートは、便利で快適で、それはそれで素晴らしい。お金が必要だが、人が作った快適な都市空間を享受できます。

さて、風景は北国に移ります。天気のいい夕暮れ時、体を動かすために外に出ます。奥の農道を歩いて、いつものことだが松の木が2本、正面と左手に立っているところに立ちます。風に揺れる松の枝、ここはもう、立派な能舞台です。舞台に上がり、しばし体を動かし魂(たま)振り?をします。

大地はうっすらと雪を被って眠りについています。月が出て、金星が輝いて、雲が流れています。それだけです。ビルもお店も鉄道も繁華街もありません。人の造作物、人為もありません。

田舎暮らしのいいところは、人も宇宙のただ一片に過ぎないことを教えてくれるところです。それ以上でもそれ以下でもありません。人は、この宇宙の成員の一つの切片なのであって、一番偉いわけでも一番素晴らしいわけでもありません。この広い宇宙の一つの形であって、最上でも最高でも、もちろん最低でもありません。それを私に知らせてくれるのが、冬枯れの景色です。ありがたい。

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