漆の里

 昔から漆器が好きでした。黒や朱に塗られたお椀やお皿を見ると、美しくてほれぼれとしました。見ているだけで、心が満ち足りてくるのです。不思議な魅力を漆器に感じていました。東北や北陸地方を旅行した時も、漆のお椀や箸や箸置きなどの小物をよく買って帰りました。

 その漆の本家本元が北東北にあります。浄法寺町です。今でも漆掻き職人が、うるしの木に傷を付け漆を取っています。
 昔は漆の実で蝋燭も作ったので、木を殺さない養生掻きが多かったそうですが、今は、蝋燭の多くは石油のパラフィンで作りますのでその必要はなくなり、最近は殺し掻きが多いそうです。6月から10月にかけて、少しずつ少しずつ掻いていく体力と根気のいる仕事です。

 日本に出回っている漆は、日本製はわずかでほとんど中国や台湾、タイから来るそうです。浄法寺の漆はもちろん国産、お値段も質もいいようです。世界遺産、日光の東照宮の本殿の大改修が今行われていますが、浄法寺の国産漆が使われていると、木工芸作家のUさんが教えてくれました。

 うるしの木には、本うるし、山うるし、ツタうるしの3種類がありますが、漆を採るのは本うるし。野山に山うるしは多くても本うるしは少ないようです。どれもウルシオールやラッコールの成分でかぶれますが、鹿もうさぎも山うるしの枝をよくかじって食べるということです。おいしいのでしょう。そういえば、漆の実のコーヒーを飲ませてくれるお店もあります。
 
 漆の歴史は古く、縄文前期頃から、漆器や漆を塗った土器がたくさん見つかっています。縄文人はかぶれるにもかかわらず、積極的に生活の中に取り入れて使っていました。弓矢に漆が塗られていましたし、木の器にも土器にも使われていました。櫛にも塗られていました。ベンガラや朱で赤や黒などの彩色も施されていました。かぶれるけど、うるしが素晴らしい性質を持っていることをちゃんと知っていたのですね。

 かぶれるという一つの悪い性質だけで、そのもの全体を評価できないことを、漆は教えてくれています。そのことをちゃんと知って漆を使っていた縄文人、自然から多くを学んでいた縄文人を、家主は尊敬しています。


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