春の演奏

生きていれば、身も心も汚れが溜まります。天地も同じこと、春夏秋と少しずつ天地の汚れは地上に堆積し、冬のはじめには雪の白い衣手に包まれます。降っては積もり嵩を増す雪は、汚れた大地をまるでいとおしむかのように、そっと抱きしめます。心地よい雪の抱擁に天地の汚れは安らかな眠りにつき、浄化される時を待ちます。

冬の間中、雪はその年の天地の汚れの嵩の分だけ降り積もります。汚れが多い年はたくさんの雪が、汚れが少ない年はそれなりの雪が、地上に降っては積もるのです。

やがて春のぬくみとともに、天地の汚れは雪解け水に身を委ねます。雪の身に少しずつ己が汚れを溶かしこみ、それが泥水となって川を下っていきます。動きの目立たなかった冬の川に取って代わって、春の到来とともに川は音を立てて流れ出します。寒さが厳しい分、北国の春の川は、世の耳目を集め、勢いよく流れ下ります。

北国の雪解け水は、気持ちよいほどのたっぷりの量です。川の流れ下る音は歌っているようで、どこか楽しげでもあります。というのも雪解け水は、天地の濁り水でありながら、しかもそれは天地を浄化する水でもあるからなのでしょう。川は、天地が浄化されるのが、わが事のようにうれしいのです。

汚れの消えた地上には、さっそくふきのとうやふくじゅそうやあずまいちげが花を咲かせます。北の野原では華やかな春の演奏が始まりました。

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